《MUMEI》
・・・・
 「お待たせいたしました。どうぞこちらへ」
 戻ってきたのは警備の男ではなく、執事風の清潔感のある男性だった。警備員二人掛かりで門が開かれ、執事風の男性は深々と一礼し尋ねてきた騎士を招き入れた。
 「執事のジャンにございます。申し訳ございませんでした。何分物騒な世の中になってしまいましたので、やむなく警戒を」
 外に負けず劣らず、屋敷のなかもやはり豪華である。廊下にはふかふかの絨毯が伸び、絵画や陶器、銅像などが並び、その多さに目が疲れてしまうほどだ。
 屋敷のなかを把握するため、辺りを見回すエド、部屋の数から間取り、いざという時の脱出経路に至るまで確認している。
 うるさいほどの芸術品が目につき、やはり鬱陶しくなったエドは自慢の長い金髪を振るった。
 一方カイルの方は、それらに見向きもせず真っ直ぐに進行方向を見ている。その表情は険しく、策を練っているようにも取れた。
 チカチカとする廊下を歩き、連れて来られた最奥の扉の前で執事は立ち止まった。ふり返り、もう一度深々と頭を下げた。

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