《MUMEI》

「あれ乗ろう!」

七生はブランコに似た乗り物を選ぶ。
瞳子さんが気掛かりだったけれど、楽しそうに並んでいたので安心した。

七生と瞳子さんを見ていると、


「付き合ってるみたいだね?」

耳元で、修平さんがそっと教えてくれた。
自分で考えるより先に言われてしまった破壊力は中々のものだ。


「そうですね……」

足にきて、転びそうになり、修平さんを掴んでしまった。


「疲れた?」


「まだ、始まったばかりですよ。」

すぐにでもこの場を離れたいのだが……自分のこの気持ちに踏ん切りをつけたいから。

我慢する。


「私が二郎君くらいの時に、確かリサと会ったんだよ……。リサの指が北極星を探しながら夜空をなぞるとそこから、空が溶けちゃいそうだった……なんて、口説いたんだ。使っていいよ、好きな子に。」

綺麗な詩的文章だ。


「ロマンチストですね。」


「恥ずかしい子供だったね。二郎君も恥ずかしいくらいでいいんだよ?七生にしても最近の子は格好つけたがるよね、薄着は駄目だよ?オジサンはちゃんとモモヒキ履いてきたからね。」

ダンディズムな修平さんにモモヒキという意外性が思わず、笑いを誘われてしまう。


「あったかそうですね。」

七生を意識しないようにするには、修平さんと話そうと努力しているが、修平さんの小さな癖や仕種に七生を思い出してしまう。

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