《MUMEI》 . −−−放課後、俺は図書室に行かなかった。 今日、天草に会うのは、やめようと思った。 朝からずっと、イラつきが消えない。 こんなこと、今まで一度だってなかったのに。 深々とため息をつきながら、昇降口で靴を履き代えていると、 「高杉ぃ〜!」 声をかけられた。 俺はゆっくり振り返る。 アイコがニコニコしながら立っていた。 「一緒に帰ろっ!」 アイコの屈託のない笑顔を見て、 俺は返事をする代わりに、瞬いた。 俺とアイコは昇降口を出ると、横に並んでグラウンド脇の歩道を歩く。 グラウンドにはもう運動部の奴らがちらほら集まっていて、準備運動やジョギングなど、思い思いにウォーミングアップを始めていた。 . 前へ |次へ |
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