《MUMEI》

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突然、アイコが仏頂面の俺を、ひょいと覗き込む仕種をした。


「今日、一日中ご機嫌ナナメだったね〜」


「めずらしーなぁ」と付け足す。

俺はいつもヘラヘラしていて、人前では滅多に怒らないからそう言ったのだろう。

肩を竦めて、俺だってイラつくことくらいあるんだよ、と呟いた。

アイコは「ふーん…」と唸ると、急に俺の腕に自分の腕を絡ませ、ピタリと身体を引き寄せる。

それから、上目づかいで俺の顔を見上げた。


「今日は、ヒマ??」


俺はアイコの顔を見下ろした。

アイコは俺の耳に口元を寄せて、なまめかしい声で、言葉をつづける。


「キモチよーくしてあげるからぁ〜……イライラも忘れちゃうくらい☆」


フフッと妖艶に笑う。俺はため息をついた。


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