《MUMEI》

──賑やかな、お囃子の音。





──屋台から漂ってくる、美味しそうな匂い。





──楽しそうな人々。





「おー、賑わってら賑わってら♪」





こーちゃんは、すっかりお祭ムード。





「っし、みかん──準備いーか?」

「ぇ」

「いざっ、出陣☆」





また、こーちゃんが私を引っ張る。





──嬉しそう。





何だか、凄く嬉しそう。





ねぇ──どうしてそんなに嬉しそうなの?





「っと──まずはわたあめな♪」

「ぇ、私は後で‥」





後でいい──私がそういうよりも先に、こーちゃんはわたあめを買ってくれていた。





「ほいっ」

「ぁ‥‥‥ありがと‥」





毎年、私はこーちゃんにわたあめを買ってもらう。





こーちゃんに買ってもらうわたあめは──凄く幸せな味がするから。

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