《MUMEI》

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昇降口で慌ただしく上履きに履き変え、そのままダッシュで図書室へ向かう。

壊れてしまうのではないかというくらい、ものすごい勢いでドアを開け、

図書室へ駆け込んだ。


天草は、いつものようにカウンターの席に腰かけていた。

俯いているので、表情はよく見えない。





…………きっと、



泣いて−−−−。




「天草さん!!」


荒い息のまま、大声で彼女を呼ぶ。


天草はゆっくり顔をあげた。


そして、その顔を見た俺は、


息をのむ…………。





天草は泣いていなかった。





いつものように、平然とした表情で、



あの、無関心な瞳で、



ただ、俺のことを見つめ返していた。





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