《MUMEI》

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「どうしたんですか、そんなに慌てて」





尋ねる声も、フツーだった。

逆に、俺が戸惑う。


「どうしたって……そのー……」


言いよどむと、天草は俺から目を逸らし、窓の外を見た。


切なげに瞳を揺らしながら、


小さく、呟く。


「中村くん、楽しそう……」


俺は顔をあげた。

天草は窓の方を見つめたまま、こちらを見なかった。

俺は、天草に言う。


「さっき、ダチから聞いて……中村、カノジョいるって……心配で………」


ぽつり、ぽつりと呟いた。

けど、天草にはなんの反応もなかった。

それが、余計に、彼女の心の傷の深さを表現しているようで、辛かった。


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