《MUMEI》
『資格』
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「………泣いてると、思った」


俺が、そう呟いたとき、

天草の表情が、少しだけ和らいだ。


「泣きませんよ」


ふわりと、優しく答える。

俺は眉をひそめた。

天草はゆっくり瞬いて、それからつづける。


「……泣きません。わたしは、全然努力しなかったんだから、泣く資格なんか、ないんです」


天草は振り向いた。

今までにないくらい、穏やかな表情だった。

俺は言葉を失う。

天草はほほ笑んだまま、言った。


「心配してくれて、ありがとう。あと、応援してくれて………でも、わたしは大丈夫ですから」


彼女がつむぎだす、その言葉のひとつ、ひとつが、胸を突き刺すようで、痛かった。


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