《MUMEI》
クーのマンション
クーは、十階建のマンションに住んでいる。


一昔でいうところの高層マンションは


今の世の中、普通だった。


温暖化が進み、海面が上昇した結果


裕福な人間は、標高の高い安全な場所に住居を構え


それ以外の人間は、狭い土地に密集して生活せざるを得なくなった。


その為、このような高層マンションが、庶民の生活の場になったのだった。


ガー


ガラガラガラ


自動ドアが開くと同時に、クーはマンションに入った。


節電の為に、薄暗いロビー


強烈な紫外線の為に暑い昼間と異なり、夜は、異常に寒い


くどいようだが、今の世の中節電は基本中の基本


クシュン


薄着の少女は小さく震えていた。


「起きた?


もうちょっと待ってね。

じき、あったかいとこ行くから。


お風呂も、美味しい物もあるから」


いつの間にか目覚めていた少女に、クーは優しく話しかけたが、少女は全く反応しなかった。


しかし、クーは特に気にする様子もなくオートロックの暗証番号を素早く入力し


エレベーターに乗り込み、十階ボタンを押した。


到着するまで


クーも、少女も無言だった。

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