《MUMEI》 いない、厳部室に行く途中、厳と松本のクラスの前を通った。 「劇、頑張って下さい」 「ありがとう。…厳は?」 「今は、くるみちゃんの所に行ってます」 「そうか」 (偶然か? それとも、避けられてるのか?) 厳と松本のクラスは普通に通り道だったが 石川がいる料理部点心喫茶は、丁度反対方向で 部室や体育館に行く俺とは絶対に会わない場所にあった。 「やっぱりくるみちゃんがいいのかもしれませんね」 「いや、そんな事は…」 俺が見る限りでは、無かった。 …それなのに。 「初めてなんです。厳君が、一人で誰かに会いに行くの」 「…ごめん」 「田中先輩?」 「ごめん」 落ち込む松本に、俺はそれしか言えなかった。 (だって、俺のせいかもしれないし) 厳がここにいないのは、俺に会いたくなかっただけかもしれないのだ。 「理由言えないけど、ごめん。…まだ、諦めるなよ、松本」 「…はい。ありがとうございます」 「じゃあ、俺もう行くから」 「はい。後で見に行きます」 「厳、誘えよ」 「…」 「誘え」 松本は、苦笑しながらやっと頷いた。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |