《MUMEI》

──花火を見つめている私の隣りで、こーちゃんが夢中になってシャッターを切っている。





けど、向かい側から吹いてきた風で‥煙の流れが変わった。





「ぅおっ‥煙がッ‥‥‥ごほっ‥」

「! 大丈夫‥?」

「ごほっ‥‥‥、ぁぁ、何とかな──」





むせりながら、それでもカメラはしっかり構えたままのこーちゃん。





「──平気になったんだな──そーいや」

「?」

「こーゆー花火、前は恐がってたろ?」

「うん──」





まだ小さい頃は、この花火が恐くて──こーちゃんの陰に隠れて見ていたっけ。





でもだんだん、平気になってきた。





──君のお陰で。

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