《MUMEI》

何種類か、色んな花火を試した。





こーちゃんは、初めにやったススキ花火がお気に入りみたい。





「なぁ、みかんも撮ってみっか?」

「‥ぇ」





思わず、手に持っていた花火を落としそうになった。





こーちゃんがそんな事を言ったのは、初めてだったから。





「‥‥‥ううん」





私は‥デジタルカメラの使い方を知らない。





‥それに。





こーちゃんの大事な物に触るのが、恐かった。





「ちょっとやってみねーか?」

「‥‥‥‥‥‥‥」





こーちゃんが、私の後ろに回り込んで──





「──ほらっ」





カメラを、私の目の前に掲げた。





だから私は、カメラのレンズ越しに花火を覗く事になった。

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