《MUMEI》

──不思議。





さっきと同じ物を見ているのに‥何かが違う。





「ここがシャッターな♪」

「───────」

「押してみ?」

「私‥‥‥が‥?」





‥駄目。





‥恐い。





「──ほら」

「‥!っ」





私の手に、こーちゃんの手が重なった。





シャッターが、切れる音。





「なっ、簡単だろ?」

「‥‥‥‥‥‥‥」





私は、すっかり固まってしまって‥何が起きたのかが分からなかった。





こーちゃんが、私の後ろに回り込んで──





「──ほらっ」





カメラを、私の目の前に掲げた。





だから私は、カメラのレンズ越しに花火を覗く事になった。

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