《MUMEI》

「あんまり擦んなよ‥? お前すぐ睫毛目に入っちまうんだから──」

「‥‥‥ごめん‥」





何だか‥恥ずかしくなる。





「そんじゃあ気ぃ取り直して次行きますか☆」

「‥ぇ」

「まだ残ってんだぜ? 後10本」

「‥‥‥うん」





──遠くから聞こえる、蝉の声。





それを聞きながら、切なくなる。





「ほいっ、好きなの選びな」

「───────」





こーちゃんの手に握られた中から、1本抜き出す。





それを、ゆっくりと炎に近付けた。

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