《MUMEI》
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 「わざわざそんな話をしに来たのではない。『乙女の嘆き(スウェール・セレム)』について知っていること、洗いざらい白状してもらう」
 家を貶され、苦い顔ひとつしない目の前の若すぎる騎士にツヴィは興味を持った。
 貴族ならば家の名を汚されることを良しとしないもの。名を上げるために戦い、名を上げるために生きる。そのように括ってしまっていいほどだ。しかしこの青年はそう言った考えは持っておらず、貴族には稀な存在だった。
 妬ましいほどの美形が屈辱に歪むさまを拝もうとしていたツヴィだが、黒髪の騎士は思ったように動かず、ツヴィと対等な位置に立っている。
 若く軟弱な男にしてはなかなかやると感心したツヴィは皺だらけの頬に手をやった。もう一度視線で二人の騎士を見定めた。
 金髪碧眼の精悍な顔つきの騎士に、黒髪黒眼の底が知れない美形の騎士。共通して言えることはいい眼をしていること。これからこの国を担っていく逸材であることは一目でわかった。

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