《MUMEI》 「みかん、ちょっとこれも持っててくれっか?」 「うん‥」 私は、両手に1本ずつ線香花火を持つ事になった。 並んで弾ける2つの光に、こーちゃんがカメラを向ける。 「やっぱこれが一番だな──俺」 「どうしてこれが好きなの‥?」 「ん? だって綺麗じゃん?」 「でもすぐ消えちゃうよ‥? ‥‥‥ほら‥」 「だからいーんじゃね?」 「ぇ‥‥‥」 ‥意外だった。 どうして、こーちゃんはそう思うんだろう。 「ほんとに綺麗なもんってな? 長続きしねーんだ」 「‥こーちゃん‥?」 「だから惹かれるっつーかさ、そーゆーのを、もっとこれから撮りてーなって」 「───────」 儚い物だからこそ。 一瞬の輝きが、掛け替えのない物になる。 「だから──よーく見ときな?」 「──うん」 私は、見つめた。 君が、フィルムに焼き付けるように。 瞼に、心に、この光を焼き付ける。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |