《MUMEI》

「みかん、ちょっとこれも持っててくれっか?」

「うん‥」





私は、両手に1本ずつ線香花火を持つ事になった。





並んで弾ける2つの光に、こーちゃんがカメラを向ける。





「やっぱこれが一番だな──俺」

「どうしてこれが好きなの‥?」

「ん? だって綺麗じゃん?」

「でもすぐ消えちゃうよ‥? ‥‥‥ほら‥」

「だからいーんじゃね?」

「ぇ‥‥‥」





‥意外だった。





どうして、こーちゃんはそう思うんだろう。





「ほんとに綺麗なもんってな? 長続きしねーんだ」

「‥こーちゃん‥?」

「だから惹かれるっつーかさ、そーゆーのを、もっとこれから撮りてーなって」

「───────」





儚い物だからこそ。





一瞬の輝きが、掛け替えのない物になる。





「だから──よーく見ときな?」

「──うん」





私は、見つめた。





君が、フィルムに焼き付けるように。





瞼に、心に、この光を焼き付ける。

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