《MUMEI》

──こーちゃんが嫌いな物って‥何なんだろう。





訊いた事がないから分からない。





「──ねぇ、こーちゃん──」

「ん、どーした?」

「嫌いな物ってある‥?」

「嫌いなもん‥?」





こーちゃんはキョトンとして、レンズ越しに私を見つめる。





「食いもんとかなら何でも来いだけどな──」

「───────」

「でも1つだけ‥どーしても好きになれねーもんがある」

「何?」

「──昔の俺──」

「‥ぇ」





私は、耳を疑った。





まさか、こーちゃんが自分を嫌いだなんて‥これっぽっちも思わなかったから。

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