《MUMEI》

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俺は、そのキレイな笑顔に見とれながら、

言葉をつづける。


「なんで、名前知って……」


俺は今日まで、天草に名乗ったことはない。一度も聞かれなかったし、彼女は中村に夢中で、俺なんかに興味はないから、名前を教えてもムダだと思っていた。

すると、天草は悪戯っぽく瞳を輝かせて言った。


「個人情報は、キチンと管理してます」


「図書委員の勤めですからね」と、付け足した。

そこで俺は、まえに貸出カードを作ったとき、ちゃんと管理するようにと、天草に押し付けたのを思い出した。


俺は、吹き出す。


顔を膝にうずめて、ずっと笑っていた。

その間も、天草は俺の傍から離れなかった。

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