《MUMEI》
罪悪感
「おはよー!!」
明るく大きな声と共に、今宵が教室に入った。
その後に歩雪がゆっくりと近づく。
「おはよー!!」
「おはようっ今宵ちゃん、神瀬くん!!」
クラスメートが各々挨拶を返す。
よかったな〜クラスにも馴染めて!!
今宵はクラスメートに挨拶を返しながら、にこにこと笑う。
すると今宵と歩雪の肩にポンッと手がのった。
「おは〜!!今宵ちゃん、歩雪♪」
「琴吹くん!!おはよっ」
2人の肩に手をのせた紘はにかっと笑った。
「何、いきなり」
歩雪は不思議そうな顔で紘に尋ねる。
「あぁ、呼び方のこと?いいじゃん、気にすんなよ!!」
「気にすんなよって・・・」
「もうダチだろ!?な?ほらオレのことも何とでも呼べよ!!」
「もうどうでもいい」
親指を立ててニカッと笑う紘を、歩雪はスパッと切る。
見事な一刀両断だった。
「うわぁ!!いつもより酷いなお前!!!」
「琴吹はいつもよりウザいよ」
「歩雪くん・・・」
そりゃ仲がいいのはいいんだけど・・・琴吹くん膝を抱えて蹲ってるよ?
かわいそうに。
暑苦しいのはいつものことなんだから、ほっといたげなよ・・・。
「あんたも相当酷いと思うけど」
「は?」
「全部口に出てるよ」
「うぇぇ!?」
今宵は慌てて口に両手をあてる。
ご、ごめん、琴吹くん!!
心の中で謝りながら琴吹を見ると、かなり小さくなっていた。
「ほっとけば戻るよ」
「そうだね」
「そこ、2人で勝手に納得しない!!!」
自力で立ち直った紘は、即座に突っ込んだ。
「あはははは!!やっぱおかしいよ、琴吹くん!!」
「・・・・・・ばか」
笑っている事を隠そうとせず今宵は腹を抱え、歩雪は口元を緩めた。
琴吹くん、朝から絶好調だなぁ。
あんなんで疲れないのかな?
「あんた達、朝から本当に煩いわね」
「秋葉ちゃん!!おはよう!!」
秋葉が呆れながら今宵達に近づいてきた。
「あーんーたーねぇっ」
「な、何?」
突然秋葉が怖い顔をして今宵の腕を掴み、歩雪達に背を向けさせた。
「何あんたのん気に挨拶なんかしてんのよ!?」
「な、何で?」
もちろん小声での言い合いである。
「馬鹿!!あたし達はライバルになったのよ?ガンガン歩雪くんに責めていかないとだめでしょ!?」
「は、そっか!!・・・って秋葉ちゃんは私にこんなこと言わないほうがいいんじゃないの?ライバル、なんでしょ?」
言わないでさっさと歩雪くんに話しかけるとか。
もちろんイヤだけど・・・。
「何でそれを早く言わないのよ!!!」
秋葉は慌てたように小声で叫ぶ。
そんな秋葉を見て、今宵はくすっと笑った。
「なにがおかしいのよ?」
「秋葉ちゃんは優しいじゃん。だから『ライバル』っていう前に、『大切なお友達』だよ」
こんなに面倒見のいい秋葉ちゃんだもん。
ずっとお友達でいたいよ。
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