《MUMEI》
・・・・
 ツヴィが『乙女の嘆き(スウェール・セレム)』を指揮していた一人であることを突き止めたことでも、それは証明されている。
 「あれについてよく調べられたと誉めてやろうぞ。だが、いまごろあれの何を知ろうと言うのだ。貴様らが追うは殺人鬼、知ったところで何になる」
 儀式と事件の関連性に気づいていないツヴィは、的外れなことを言うカイルを嘲笑う。
 それなら、と方向を変えカイルは被害者の名を上げることにする。
 「宮廷神官が殺されたことは知っているな」
 「あの狂乱神官(マッドプリースト)であろう、調子に乗り無思慮な断罪を実行してきた報いだ。いくら権力を握ろうともっと賢く使わねばな。あれでは殺されて当然だ」
 言葉の端々に棘があり、ツヴィがハイムを快く思っていないのが伝わってくる。
 「宮廷神官に次ぎ、今朝早くブラッハー家のリオーエンが殺された」
 前もって予測し、網を広げていたカイルだからこそいち早く手にすることができた情報である。現役を引退したツヴィのもとに届いているはずもなく、初めて知らされた事実に驚く。それでも驚きは心に留め、落ち着き払った表情で口を一文字に結んだ。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫