《MUMEI》

「蜜花?」

「──ぇ」





無意識に前に伸ばしかけていた手を‥慌てて引っ込めた。





「‥ぃ‥今の、何でもないからっ‥」

「──コウさんならさ、ちゃんと分かってくれるよ──きっと」

「そう‥かな」





別に‥こーちゃんを疑っている訳じゃないんだ。





だけど、どうしても‥言おうとすると、声が出ない。





伝えられるチャンスは、いくらでもあった。





だけど結局は、タイミングを逃してばかりいる。





もしかしたら、こーちゃんが先に気付いてくれるんじゃないか、なんて──。





そんな期待を‥無意識にしてしまっているのかも知れない‥。

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