《MUMEI》

お昼の後‥私と有里はベランダに出ていた。





「有里──‥」

「ん──?」

「‥‥‥なれたらいいのにね」

「ぇ?」

「嫌いに‥なれたらいいのにね」

「蜜花‥?」

「そしたら──こんなに辛くならなくて済むのにね」





‥嫌いになれたら。





嫌いになれたらどんなに楽だろう。





「‥嫌いになりたいよ‥」

「ちょっ‥何言ってるの?」

「‥‥‥‥‥‥‥」





兄妹としてなら──今まで通り‥楽しい毎日を過ごせる気がする。





だから‥。





「お、いたなー?」

「‥こーちゃ‥」





──こーちゃん。






首からデジタルカメラをぶら下げた、背の高い‥キャラメル色の髪と青みがかった目をした‥優しい人。

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