《MUMEI》 壱子ちゃん効果壱子ちゃんの必死な様子に俺は固まっていた。 茶化していた周りも、いつの間にか静かになっていた。 「…ありなんじゃないか?」 沈黙を破ったのは頼だった。 「いますぐじゃなくて、未来なら、全然ありだろ」 頼は俺と俺の足にしがみついている壱子ちゃんを交互に見ながら、何度も頷いた。 「でも田中先輩、彼女いるんじゃないですか? 確か、忍さんっていう」 「遠距離だし、別れる可能性大だろ」 首を傾げる坂井に、頼はきっぱりと言った。 「頼…」 「マジでさ。考えてみたら?」 「…お前。 … 面白がってるだろ?」 「やだな〜 本気だよ? 三分の一位は」 「残りは?」 「秘密」 頼は、語尾にハートマークがつきそうな口調で言い いつも通り笑った。 「ねぇ、返事は!?」 存在を忘れるなと言わんばかりに壱子ちゃんが声を張り上げた。 「とりあえず、保留で」 「脈アリね!」 「いや、…でも」 頼をいつも通りにしてくれて 「ありがとう」 俺は、壱子ちゃんに 周り曰く極上の微笑みを向けた。 前へ |次へ |
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