《MUMEI》
壱子ちゃん効果
壱子ちゃんの必死な様子に俺は固まっていた。


茶化していた周りも、いつの間にか静かになっていた。


「…ありなんじゃないか?」


沈黙を破ったのは頼だった。


「いますぐじゃなくて、未来なら、全然ありだろ」


頼は俺と俺の足にしがみついている壱子ちゃんを交互に見ながら、何度も頷いた。


「でも田中先輩、彼女いるんじゃないですか?

確か、忍さんっていう」

「遠距離だし、別れる可能性大だろ」


首を傾げる坂井に、頼はきっぱりと言った。


「頼…」

「マジでさ。考えてみたら?」

「…お前。



面白がってるだろ?」

「やだな〜 本気だよ?

三分の一位は」

「残りは?」

「秘密」


頼は、語尾にハートマークがつきそうな口調で言い


いつも通り笑った。


「ねぇ、返事は!?」


存在を忘れるなと言わんばかりに壱子ちゃんが声を張り上げた。


「とりあえず、保留で」

「脈アリね!」

「いや、…でも」


頼をいつも通りにしてくれて


「ありがとう」


俺は、壱子ちゃんに


周り曰く極上の微笑みを向けた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫