《MUMEI》 本番直前「いい感じで約一名以外リラックスできたみたいだし、そろそろ行きましょうか」 洋子先生が軽く手を叩きながら、全員に聞こえるよう声をかけた。 約一名とは … 二狼役の、保だった。 「保、大丈夫よ」 「う、う…」 「衣装似合ってるし」 「…」 「セリフ多少かんでも忘れても違和感無いし」 「…」 「何より! 皆の目当ては田中先輩と頼君とエイミーちゃんだから! ね!」 「… … うん」 (坂井のおかげで緊張は解けたけど、テンションは下がったような…) とりあえず、俺も部長として、保を励ます事にした。 「頑張ろうな、保!」 「…」 (あ、あれ?) 「俺も、こう見えて緊張してたり、…するし、な?」 「そりゃ、あんたは注目の的だし」 「いや、そんな…」 「別にいいけどね!あんた美形だし! 俺は平凡だし! こうなったら、平凡の意地を見せるしかないよな」 保はキッと俺を睨みつけた。 保の緊張は解け、やる気が出たが かわりに少し俺は凹んだ。 (まぁ、いいか、俺は) 最初のシーンは俺は親と離れたくないと、悲しむ演技から入るのだから、支障は無かった。 前へ |次へ |
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