《MUMEI》
・・・・
 冬の寒さがよりいっそう増したころ、宮殿に魔術師を名乗る男が現れた。魔術師を名乗る男は身元を明かそうとはせず、纏っておった漆黒のローブを外せという命令も頑として首を縦に振らんかったそうだ。
 それでも男はユリウス王との謁見を求めてきた、そしてそれがいとも容易く通ってしまった。信じられるか、素性も明かそうとしなかった男をだ・・・どんな方法を用い丸めこんだのか、とにかく前代未聞の出来事だった。
 程なくして、玉座に招かれた男を見たとき、不覚にも言い表せぬ感覚に見舞われてしまった。顔も、腕も、足も、全身を隠したそれのせいか、あれのなかには本当に人が入っているのか、背筋が凍る思いを拭えなかった。
 男はユリウス王の前で跪くと、『貴方様が伴侶を救いたいと強く願うのであれば、助言いたしましょう』などと自信あり気に言い放った。
 ユリウス王も馬鹿ではない、信頼関係を築いていない、ましてや初対面の似非魔術師の言葉を信用するはずがない。
 憲兵に男を追い返すよう指示を出そうとしていたときだった、あの男が妙なことを喋り出したのは・・・。

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