《MUMEI》

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混乱したわたしは、蒲生くんを見つめながら、「あ、あの……」と口ごもる。

すると、蒲生くんは寝ぼけたような顔をして、「あれ?」と掠れた声で言った。


「小早川、起きてたの?」


わたしはやっとのことで頷く。蒲生くんは大アクビをしながら、ゆっくり身体を起こして、ベッドに備えつけてあるデジタル時計を見た。わたしも時計を見る。午前10時を過ぎたところだった。

蒲生くんは頭をかきながら、呟いた。


「もーこんな時間か……そろそろ出ないと延長料金取られちゃうな」


ブツブツ呟き、それからわたしの顔を見る。


「シャワー使っていいよ。俺、家帰ってから浴びるし」


こーいう状況に慣れているのか、蒲生くんはのんびりとした口調でそう言った。

けれど、

わたしはそれどころじゃない。


「蒲生くん……」


わたしが声をかけたときには、彼はすでに着替え始めていた。

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