《MUMEI》

「…俺」

「ん?」

「煙草吸いたい」


「…べつに吸えば…」

「ちょっと行って来る」


裕斗は、すっと立ち去った。


…−−わざとらしい立ち去り方だったけど


「サンキュ…」


思わずそう口にして、俺は襖を閉めた。


そして、惇も窓を障子で閉め塞いで



崩れる様に、




俺にしがみついてきた。









「…頑張ったな、惇、よく堪えた」


「ゥウッ…、ゥッ、たかし…、たかしー…、兄貴が…。兄貴がぁ……ッ…」


奮える小さな体をきつく、きつく抱きしめる。


小さな子供が母親にしがみつく様に、惇は俺に乗っかって頬に頬を擦り寄せている。


「…もう離れないから、惇の傍から離れない、守りたいんだ


惇を俺に守らせて欲しい」




すると惇は、ゆっくりと、ゆっくりと、俺から離れ、涙でぐちゃぐちゃな顔で俺を見つめてきた。



「隆志…本当に俺で…良いの?こんな俺でいいの?」




「俺は惇がいればいい、
言っただろ?
離さないって

一生、何があっても俺は惇を離さない
お前がもう迷わないようにずっと掴んでいる。
ずっと傍にいて、絶対に不安にさせない、
だから、だから…






これから先の惇の人生、




俺に…


俺に全部ください」













「…ッ…、ふ…」


「…惇」


再び俺にしがみついてきた惇。




「…はいっ…

も…貰って?全部貰って!
俺、
俺もう迷わない!
たかしッ!



ん…、ッ…、もう俺は!俺は!


愛してる隆志




俺はもう隆志した見えない、隆志だけが欲しい、隆志から離れない!


愛してる、
愛してる、


愛してる!!」










全身全霊をかけた激しいキスを、俺達は交わした。







お互いの想いのたけを込めて、深く、深く求めあった。









セックスで体を繋げるよりも、唇だけでそれ以上に深く繋がる事が出来るのだと






始めて知った。







もう俺達には、迷うすべがない。







−−−もう





怖いものは










何もない。













惇がこの腕の中にある限り









俺に怖いモノは






もう








何もない。














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