《MUMEI》 . わたしは弾かれたように顔をあげる。 蒲生くんは優しい目でわたしを見つめていた。 「なにもしてないから。酔い潰れた女の子をヤッちゃうほど、キチクじゃねーし」 彼は、ア然としているわたしから目を逸らし、シャツのボタンをとめはじめる。 「昨日、カラオケでみんな潰れちゃってさー。でも小早川だけどーしても起きなくて、俺、家知らないし、仕方ないからココに一緒に泊まったんだよね」 昨日の顛末を説明されて、わたしはまた顔を赤らめた。先程とは違う理由で。 「そ、それは、どーも……とんだご迷惑を………」 搾り出すように言うと、蒲生くんは「どういたしまして」と朗らかに笑った。 . 前へ |次へ |
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