《MUMEI》 耳元で風が唸る。 アラタはなにか熱いものに押され、饒舌になっていた。 「アヅサと俺は 血を躯を分かち合った双子だったのに。 俺から奪った。 そして、死した今も、アヅサの尊厳を侮辱し続ける! ……俺も奪ってやろうか? お前は俺の足元に縋って死を懇願するんだ。」 「斎藤には出来ない」 「どうかな。 追い詰めてやるよ。 この俺に出来ないことがあると思うのか? まさか、 俺が人間を 殺したことないとでも?」 ひらひらと艶やかにシャツの端々が舞う。 白い首筋が見え隠れした。 抑揚のない声が余計にアラタを引き立たせる。 樹はアラタに目を奪われ、ほんの一瞬だけ死んでもいいとさえ思った。 斎藤アラタはそういう妖しさを兼ね備えている。 前へ |次へ |
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