《MUMEI》 新事実. あれから−−−。 やっぱり、百々子さんからはなんの連絡もなく、 会うこともなかった。 意識的に、公園を見ることを避けていた。 だって、俺はもう必要ないから。 百々子さんの傍には、あの男がいる。 俺は、彼女にとって、近所に住む高校生で 、たまにヒューと遊ぶだけの、顔見知り。 ただ、それだけ。 俺は、百々子さんの幻影を振り切るように、毎日に没頭した。 来る日も、来る日も、 ドッグトレーナーの本や、専門学校の資料を読み耽った。 俺には、その夢しか、残っていなかったから。 そして。 長い夏休みが終わり、 新学期になった。 「おはよう」 教室に入ると、一番最初にのぞみが声をかけてきた。 俺はかばんを自分の席に置き、オハヨ…と答える。 のぞみは俺の傍に寄り、顔を覗き込む。 「なんか、焼けたね〜!さては、勉強サボって遊びこけてたなぁ!?」 俺はのぞみの顔をじっと見つめる。 …………久しぶりに会ったのぞみは、なんだかテンションが高くて、 それが、少しウザったかった。 真面目に勉強してたよ、と素っ気なく返したところに、 「オハヨ〜、将太!」 登までやって来た。 登は俺に纏わり付いて、「将太に会えなくて寂しかったよ〜」と心にもないことを言う。 「俺は、せいせいしてたけどな!」 登の腕を離しながら、淡々と答えた。登は「冷たい奴〜!」とブーたれる。 じゃれ合っている俺らに、急にのぞみが「あのね〜」と声をかけた。俺たちはのぞみに注目する。 「実は、わたし、このまえ中原のお家に行ったんだー」 俺は眉をしかめた。 「……なんで?」 そんなの知らない。 母さんからは、なにも聞いていない。 . 前へ |次へ |
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