《MUMEI》 . 不思議がる俺に、のぞみはかわいらしくほほ笑み、言った。 「中原が夢見つけたって聞いたから、激励しに行こうと思って」 それを聞いて、俺は隣にいる登を睨んだ。 俺が夢を見つけたという話は、登にしかしていないから。 登は素知らぬふりで、あさっての方を見つめている。 …………この、おしゃべりめ。 俺らの空気に気づかず、のぞみは肩を竦めてつづけた。 「でも、住所がよくわかんなくてー。結局、未遂で終わっちゃったの」 俺はため息をつく。 「電話すりゃよかったのに」 俺の台詞に、のぞみは頬を膨らませ、「サプライズしたかったの!!」と答えた。 そして、 信じられない言葉を口にした。 「途中にあった公園で、女のひとに道聞いてみたんだけどさ、やっぱり迷っちゃって、散々だったよ〜」 俺は、固まった。 …………公園? 女の、ひと? 「それって、ショートカットの……?」 おもむろに尋ねた俺に、のぞみは嬉しそうに、「そうそう!」とはしゃいだ。 「細身のキレイな女のひと。公園に、おっきい犬と一緒にいたの」 …………間違い、なかった。 百々子さんと、ヒューだ。 公園に、いた?? だって、 『しばらく会えない』って、 そう言ってたのに…………。 連絡だって、なにもない。 ヒューを連れてたんだったら、 電話でも、メールでも知らせてくれたら。 百々子さんは、なんで連絡してくれなかった? 考えられる理由は、ひとつだけ。 −−−俺に、会いたくないからだ。 うまく呼吸が出来なかった。 胸が、潰されたように苦しくて。 百々子さんに避けられていると、 そう思っただけで、 悲しくてしかたなかった。 俺は、やっとのことで、「そっか…」と呟いた。 それ以上はなにも言えず、込み上げてくる悲しみに気づかないフリして、 ゆったりと、笑ってみせた………。 . 前へ |次へ |
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