《MUMEI》 . 義仲はルカさんを睨んでいたが、急にスツールから降りると、ゆうこママの方を見た。 「自転車、貸して。璃子ちゃん、送るから」 ゆうこママは戸惑いながら頷き、いいわよ……と呟いた。義仲は、ありがと、と簡単に答えて、それからズカズカわたしのところまでやって来る。 顔を覗き込みながら、言った。 「……まだ、立てないよね?」 わたしがなにか答えるまえに、義仲はわたしの身体を抱き上げる。 そのまま、ドアへ向かい、外に出る直前に、いろいろありがとう、とゆうこママにお礼を述べた。 ルカさんは、義仲の姿をじっと見つめたまま、黙っていた。 彼女を見ることなく、義仲はわたしを連れてドアを開けた………。 . 前へ |次へ |
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