《MUMEI》 「おいおい泣くなって──」 こーちゃんが苦笑しながら、私の頭を大袈裟な位にクシャクシャと撫でた。 「寒かったろ‥? こんなに手ぇ冷たくなっちまって──」 大きな手が、私の両手を包み込む。 「ちっさい手だなぁ」 ──優しい声。 ──温もり。 「‥あったかい‥‥‥」 涸れていた涙が、また溢れてくる。 「ミツカ」 こーちゃんが呼びかけた。 「俺、お前の事全然怒ってねーし──だからさ、気にすんなよ」 「‥‥‥‥‥‥‥」 訊いて‥みよう。 「‥何‥で‥?」 「ん」 「どうして出たくないの‥?」 前へ |次へ |
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