《MUMEI》
序章 〜手紙〜
寒い冬が終わり、最近はもうだんだんと、陽の光も優しく、暖かくなってきて、桜の花もちらほらと咲きつつある。

そんな中俺は、5つ下の妹仁湖(にこ)の、煩い声によって叩き起こされた。

「お兄ちゃん、起きてよぉっ!今何時だと思ってるの!?」

俺は、ウーンと唸って、声のする方とは逆に、寝返りをうつ。

「もぉっお兄ちゃんってばぁ!!折角私が朝から頑張ってご馳走いっぱい作ったのにぃ……」

それでも止まない妹の声。
それに、ご馳走とは何事か、とうっすらと瞼を開けた。

「……仁湖……煩い……それにゴチソウってなに……?」


仁湖は、俺の『煩い』という言葉にムッとしたかと思えば、『ゴチソウってなに……?』という言葉に呆れたと言わんばかりの顔をした。

俺は、ムクッと起き上がると、ベッドから立ち上がって大きな欠伸と共に、これまた大きく伸びをした。

「お兄ちゃんってば……今日が何の日かも忘れたの?自分の誕生日でしょ?」

『誕生日』言われてヤッと気が付いた。

今日は、俺の誕生日。それも、ハタチの。

アイツの居ない四年目の誕生日。

「お誕生日おめでとう!お兄ちゃん!ほら、さっさと下に行く。想兄も待ってるよ」

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