《MUMEI》
終わらない劇
三匹の説得に赤ずきんは耳を貸さなかったが


何気なくテーブルに置いたままだった三狼お手製ケーキを食べた瞬間


赤ずきんの頬が緩んだのを、一狼は見逃さなかった。


赤ずきんは、元々三狼のレンガの家と


三狼の作るお菓子を欲しがっていた。


その事を、一狼は赤ずきんに思い出させ


赤ずきんに愛を囁き続けた。


こうして


一狼と赤ずきんは三狼のレンガの家に引越し


三狼は、赤ずきんのおばあさんの家に引越し


毎日赤ずきんの為にお菓子を作る事を誓った。


ちなみに運ぶのは、三狼ファンクラブの会員である森の動物達だった。


存在を途中から忘れられた二狼だが


その器用さから、彼は森の皆のパシリ…


ではなく


便利屋として、活躍し


ちゃっかり彼女も作っていた。


(無事に終わったな)


俺に渡された、台本はそこで終わっていた。


しかし


(あれ?)


何故か、幕が下りてくる事は無く


『…三狼の相手が見つかったのは、それから数日後』


(あ、相手って何だ?)


オロオロする俺の耳に


…馬車の効果音が聞こえてきた。

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