《MUMEI》

「ドイツ語も…覚えないといけないのにな…」
「でも彼は日本語で話してくれてるんでしょ?」

林くん…もとい、ジェイミーはそう言うとケーキを頬張りながら何かを考えている様子だった。

「じゃあさ〜キミの彼には勉強しに来てるって言って僕ん家に来てよ」
「えっ///」

ジェイミーが頼んでくれた甘い蜂蜜と香ばしいアーモンドのケーキと紅茶セットに口を付けながら、ジェイミーの話を聞いていたら、突然自分の家に来てくれと言い寄ってきた。

「ねぇお願いウチに来てよ〜♪」
「え…えぇ…ι」
「僕も日本語とか教えてもらいたいからさぁ…」

アジア式に前で手を合わせてお願いしてくるジェイミーに、僕もなかなかノーとは言えない…。

「…でも…ジェイミーはちゃんと喋れてるよ」
「えι…でも…何だっけ”けーご”ってやつ…ι」

けーご…”敬語”…かな。

そっか、日本語の中でも敬語は分かりにくいよね…。

「だからさ、ウチに来て…」


さっきから気になっていたんだけど…。

何だか話を上手く進まされているような気がしているんだよね…。


悪い事に巻き込まれているような…そんな予感がしていた。


「……」
「…何だよ…さっきから疑り深い目だよねぇ」

やっぱりジェイミーも僕のそんな様子に気付いたらしく、イスを引いて僕と膝が合うくらい近くに寄ってきて僕の顔をジッと見つめてきた。

「…何て言うか、会ったばかりだし…まだそんなに信用出来ないんだ」
「…そぅ…だよねぇ…」

僕がそう言うとジェイミーも考え込んでしまい、下を向いてうなだれてしまった。


「別に…キミが日本人じゃないから疑ってるってワケじゃないんだ…」
「分かってるよ…本当の事言う…キミに疑われないようにね…」

そう言うとジェイミーは下を向いたままイスを前後に揺らし、イジケた子供のようにウダウダしながら口を開いた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫