《MUMEI》

それにしても…ジェイミーの家のこのキッチンといいリビングといい…。

一人住まいにしては広すぎるから、家族で住んでるのかな…?

「こっちの部屋だよ、ルームシェアしてんだ」
「あ…そうなんだ」

”ルームシェア”って、聞いてはいたけど実際には初めて見た。

そのルームシェアされたって言う部屋から見たリビングからは、いくつか個性的なタグの掛かったドアが見えていた。



案内されたジェイミーの部屋にはベッドとデスクとちょっとしたテーブルがあって、見た目は日本の学生さんと変わらないような部屋だった。

その部屋にあったテーブル、と言っても外国でよく見るような高さではなく、日本やアジアで見るような低さで、その横にあるソファーも同じように低く、自分で木材なんかを運んできて、自分で重ねて作ったようだった。



ジャケットを言われた所に掛けてその懐かしい様式のソファーに足を伸ばして座っていると、向こうからジェイミーが中国っぽいお茶セットを持ってきてくれた。

「日本の緑茶はアジアンショップにあったんだけど、やっぱりこっちであるのは高いしあんまり美味しく無いんだよねぇ〜本場日本のとは大違いだよ」
「ジェイミーは日本に来た事あるの?」
「もちろん♪」

そう言うとジェイミーは嬉しそうに日本に滞在していた時の事を話してくれた。



「その辺だったら僕の家の近くかな…」
「ワォ!あんなトコ住んでるの!」
「うん…でもあんまり顔出してないけどね…」

高校の頃、あの人と暮らすようになってから、家に帰った事は無い。

何だかもう…帰れないな。



「顔出してないって…生まれた家に帰ってないって事?」
「そう…だね、僕…こっちに来ちゃったのもあるし…」

煎れてもらったアジアンティーの湯飲みに視線を落とし、そこに描いてある蓮の絵を所在なげに見ていると、隣に座っていたジェイミーが僕の横にピッタリとくっついて肩に頭を傾けて寄りかかってきた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫