《MUMEI》 閉幕直後「それって…」 ドンッ! 「うわ!」 「あら」 希先輩が屋代さんと…とか 志貴は、過去を聞いて、改めて俺を諦めようと思ったのか、とか あるいは、拓磨を好きなったのか、と 確認する前に 「祐也は私の!」 壱子ちゃんが、俺の足に抱きついて叫んだ。 「お利口さんね。ちゃんと舞台終わってから来るなんて」 (え?) 気付かなかったが、本当にいつの間にか幕は下りていた。 「また開きますよ。つーか、あんたら!いつまでべろちゅーしてんだ!」 保は劇が終わっても、ツッコミ役を続けていた。 「壱子ちゃん、だっけ? 祐也は手強いわよ。私でもフラレたんだから」 「えっ…」 壱子ちゃんは、不安げに俺を見た。 (ちゃんと言っておいた方がいいよな) 「ごめんね。…忘れられない、好きな人がいるんだ、俺」 「それって、もう死んじゃってる人が好きって事ですか?」 「あ、あぁ…」 「なら大丈夫!」 「…何が?」 輝き始めた壱子ちゃんの目を見ながら、俺も志貴も首を傾げた。 前へ |次へ |
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