《MUMEI》
壱子ちゃんの魔法の言葉
「私の名前、お母さんのお母さんの名前なんです。

お母さんのお母さんは、お母さんが小さい頃死んじゃって

お母さんのお父さんはしばらくお母さんと二人暮らしだったけど

お母さんのお母さんも好きだけど

今も忘れて無いけど

新しい、生きてる好きな人がちゃんとできたから。

だから、祐也もきっとまた人を好きになるよ。

できればそれが私ならいいな。

ううん…

きっとそれはナイスバディーになった私だよ!」


輝く瞳で笑顔で、壱子ちゃんは言い終わると


『言い逃げ!』と言って、走って行った。


すると、タイミング良く幕が上がり


俺は、壱子ちゃんを追いかける事ができなかった。


「…負けたかも」


呟く志貴に


(…俺も)


心の中だけで、返事をした。


『忘れなくても、いつか、好きな人はできる』


それはまるで魔法のような言葉だった。


(忘れなくて、…いい…)


旦那様を否定されず


それでも、未来は明るいと言われたのは


初めての事だった。


(ああいう子も、いるんだな…)


何だか救われた気持ちになった。

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