《MUMEI》 . レミはわたしの言葉を疑いもせず、「そっかぁ」と呟く。 「わたしも同じ。記憶ないけど、ちゃんと帰ってたよ。帰巣本能ってヤツかねぇ」 レミの台詞に、わたしは渇いた声で笑った。 すると、レミが突然、窓の外に身を乗り出した。 「誰かと思ったら、美並の愛しの蒲生クンじゃん」 わたしは、ゆっくり視線を巡らせる。 教室の窓から見える、1階の渡り廊下。 そこに、ふたつの人影があった。 ひとりは、蒲生くん。 明るい茶髪に、両耳にはシルバーのピアス。制服をラフに着こなして、爽やかに笑っている。 その隣には、女の子。 長い栗色の髪の毛を緩く巻いて、バッチリメイク。膝より上に短くしているスカートの裾から、華奢な両足が覗いている。 顔に見覚えはないが、上履きの学年色から察するに、1年生のようだ。 ふたりは楽しそうに笑いながら、廊下を歩いていた。 . 前へ |次へ |
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