《MUMEI》 アキラに抱きついたまま顔を上げないかなたの頭を撫でていると、アキラが飛び出して行った時にこっちから携帯で連絡しておいた武君とはるかが人混みの向こうから駆け寄ってきた。 「大丈夫か、かなた!」 「みんなに心配かけんなよ、このバカッ!」 「…ぅ〜…ぅん」 みんなから温かく迎えられたかなたは、アキラの手から放れて恋人の元に駆け寄ると、少しだけ笑顔に戻り二人に抱きしめられていた。 それにしても気になる…。 さっきから余裕の微笑みを浮かべていた、どうにも胡散臭いかなたと一緒に居たこの優男は、俺の方に向き直るとこちらに向かって手を差し出してきた。 「どうも、先輩のイェレミースさんですよね」 「あぁ…キミもあの学園の生徒なのか?」 「えぇそうです、委員会の方に携わっていましてね…」 委員会に、か。 私も以前この学園に居た時に生徒会長として携わっていたが、委員会の中のメンバーという事は相当な資産家か有力者の子息なんだろう。 俺はさくらがこの学園の理事長の娘だったから、さくらは昔に縁を切ったんだと言ってはいたが顔を見せるという名目でこの学園に在籍していた。 はるかとかなたも同じ様な理由からこの学園に在籍していた、ただ二人は学園の根幹には所属しておらずのんびりと学園生活を満喫しているようだった。 彼と話している最中、その向こうから身長は周りと比べて頭一つ分大きく日本人離れした体格で顎にヒゲを生やしている男が現れた。 「探しに来るのが遅いじゃないか、桃郷」 「あぁ、人が多くてよ」 その大きな男は桃郷と言い、他にも何人か似たような奴らを後ろに引き連れていた。 「おい、桃郷…どう言うことだよ…」 「…知り合いか?」 「はい、昔の同級生です」 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |