《MUMEI》
志貴と約束
店を出ると、当たり前だが真っ暗だった。


「ごめんね祐也。厳のせいで」

「…いいよ」


その厳は、泥酔した酔っ払いのように、フラフラになっていた。


一人、方向の違う厳をタクシーに乗せ、俺と志貴は駐輪場に向かって歩き始めた。


自転車だったのは俺だけだったが、志貴は親が近くの駐車場で待っているらしいので、方向が同じだった。


「ねぇ、祐也」

「ん?」

「明日、リボン交換して」

「え?」


その時、俺の脳裏には拓磨の顔が浮かんだ。


「拓磨とは去年交換したし。最後の文化祭の記念に、祐也と交換したいの。

…ダメ?」

「本当に、それだけ?」

「え?」

「志貴は、俺に恋愛感情、全く無い?」


(もしあるなら、期待させちゃいけない)


昼間壱子ちゃんの言うように、いつか俺にまた好きな人はできるかもしれないが


それは、今では無いから。


「俺は、今は誰の気持ちにも応えられないから」

「知ってるし、わかってるから、大丈夫」

「…なら、いい、けど…

本当に、俺とで、いいのか?」

「私もまだ拓磨と付き合うつもりは無いから、いいの」

「わかった」


その後、俺達は別々に帰った。

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