《MUMEI》 「──これでいい?」 「おうっ、バッチリだ」 こーちゃんが、カメラを構える。 レンズ越しに覗いているのは、私。 私はこーちゃんに頼まれて、病院の庭園の真ん中に立っている。 こーちゃんが、私を撮りたい──そう言ったから。 ちょっとビックリしたけど、それでこーちゃんの役に立てるならって思った。 こーちゃんがシャッターを切る度に、私の心臓が煩くなっていく。 「じゃあ次さ、木の下んとこ立ってみてくれっか?」 「──ぁ、うん」 言われた通り、木陰に立つ。 ──さっきよりも、こーちゃんが近い。 ‥ドキドキが、止まらない。 前へ |次へ |
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