《MUMEI》
・・・・
 「『乙女の嘆き(スウェール・セレム)』についてワシが知っているのここまで。これで満足か」
 久しぶりに長く語ったせいか、疲れた様子で肩を叩きながらツヴィはカイルに投げかけた。
 沈んだ空気をもろともしない、やはり重臣に選ばれていただけのことはある。
 「ああ、構わない」
 「そうだな、あとはここで仮面の男を待ち伏せて首を取るだけ――」
 言いかけて、エドは異変を察知し緊張が走る。
 それは終始、壁に寄り掛かっていたカイルも感じたようで、エドが合図を送ろうと振り向いたときには紋様が描かれた鞘に手をかけていた。
 窓の外を睨み、金髪の騎士は抜刀する。楽園のような小庭園のさらに奥、塀の向こう側から感じる禍々しい殺気はこちらを射ぬいており、敵が二人に勘付いていることを示していた。

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