《MUMEI》 ──蝉の声が、雨みたいに降ってくる。 ──太陽が、眩しい。 ──久し振りだ。 この道を歩くのは‥久し振り。 「アパートって──この先なんだよな‥?」 「うん。もうちょっと行くとね──見えて来るよ」 こーちゃんの隣りを歩きながら、思う。 手を繋ぎたい──。 そうっと‥そうっと左手を伸ばす。 こーちゃんは、気付いていない。 「───────」 後‥もうちょっと。 どうか──‥そのまま気付かないでいて。 前へ |次へ |
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