《MUMEI》

あの日の夜、俺は余りの空腹に目を覚ました。

でも何て言うか…




空腹っていうのは胃じゃなくて…

別の…



おかしな空腹に、俺は違和感を抱いたままで



気付いたら人気の少ない路地にいた。




向かいから一人の男性が歩いて来てるのが見えた。



その時…



その時俺は俺じゃなくなった。



多分、内にいる…



所謂、『吸血鬼』が出た。





数分後、その男性は死んでいた。叫び声も上げられずに



きっと何が起こったか理解出来なかったんだろう。




俺の意識が俺自信になった時にはもう、見るも無惨な…




さっきまで生身の人間だったとは思えない、ミイラ化した男が足元に転がっていた。


代わりに俺は満腹で…



多分、満足そうな顔をして


でも泣きながら足元に転がるミイラを見下ろしていた。

すると突然、人の気配がして……


お互いの視線がバッチリ合った。



女性がこっちを見て硬直してたのがわかった。





どこからかは定かではないけど、一部始終は見られてたんだろう。




俺は一目散に逃げた。



怖くて





見られたのが怖くて


自分が怖くて





宛もなく走り出していた。

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