《MUMEI》
・・・・
 正真正銘あの世の者たちの阿鼻叫喚を聞かされ、エドは御免こうむりたく思った。しかしこの叫びは霊的なものだ、耳を塞ごうと拒むことは不可能だろう。
 敵は慎重にこちらを追い詰めて来ていた。自分に危険が及ばないよう、視覚と聴覚を奪い確実にこちらの首を刈るつもりらしい。
 カイルとエドは剣を構えたまま一歩も動かない。
 尚も耳を劈く女たちの叫び声で、二人は会話をすることすらできず、孤独と変わりなかった。
 「   」
 ほぼ同時、二人は弾かれたように剣を薙いだ。
 間取りは熟知している、目に頼らずとも十分に動けた。本来何も無いはずの宙で、何かが刃先を掠める。
 何かが目の前にいることを感じ取り、その勢いで目にもとまらぬ速さで突進する。五感のうちの二つを封じられた以上、この機会を逃せば勝機は失われる。二人はこの一撃に賭けた。
 敵がいるであろう前方へ、必中の突きを放つ。途端、肉を抉るのが刃越しに伝わり続けざま切り伏せた。
 絶命したであろう何かを飛び越え、カイルは窓を突き破り庭先に飛び出す。エドも考えるところは同じだった。カイルに続く形になったが塀へと向かった。

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