《MUMEI》

「そう。


お前はクロの指示で動いてる。


お前自身の得点は少ないのに試合には勝ってる。


だからお前はどこかで思ってんだ。


クロの言う通りにすれば勝てるって。」


「そりゃそうっすよ!!」


「…クロはサイドプレイヤーだけど、


頭がいいからハンドボールってもんを良くわかってる。


エースが決めるってことの重要性についてもな。」


「そりゃそうですよ。」


「けど、」


「…?」


「クロは身体能力に頼るプレーをする奴じゃないからな。


わかってない部分もある。


だからあいつの作戦は相手の心理をついたり、


裏をかくプレーが多い。


自分が実践してきたそれを、


お前たちに伝えてんだ。」


「はい…」


「クロの作戦は綺麗に裏をかきすぎる。


だけど、


ハンドボールはそんなに綺麗なスポーツじゃない。


多少荒くてもいいんだ。


その荒っぽさと、


自分なら決められるっていう少し行き過ぎた自信、


自惚れが、


お前には足りない。」


「でも…」


「でもじゃね〜よ。


クロだってエースの存在の意味をわかってる。


お前のプレーで証明すればいい。


自分にもその役割ができるってことを。」


「口で言うのは簡単すけど、
実際何をどうすればいいのか…」


「そうか。
じゃあ具体的な課題を出してやるよ。」


「え?」


「市内リーグ。
全チームひっくるめての得点王になってこい。」

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