《MUMEI》
・・・・
 流れというものは大切だ。その流れに乗りつづけた者が勝利を手にする。いま出なければこちらの敗北が決まってしまう。
 結界を解く手立てを二人は持っていないが、強引にぶち壊すことならできる。
 広い庭を放たれた矢のように一瞬で駆け抜け、跳躍した。
 「“      ”」
 カイルは暗闇の中、結界に長剣を衝突させる。
 刹那、魔力のせめぎ合いを感じたものの、結界はガラス細工が砕けたような音を立て崩れ去った。
 覗く光に、落ちる破片が照らされ、宝石を見たかのようだった。
 結界の一部が破られたことにより、強度を失った結界は瓦解していく。屋敷に充満している黒い濃霧も漏れていった。
 視界を取り戻し眩しさに目を細めながらカイルは着地し、エドもつづく。いまはあの女たちの悲痛な叫びも治まり、懐かしくも心地よく感じる日常の喧騒が届いていた。
 カイルたちが立っているのは窓から一直線に結べる位置にあり、つまりは敵からの殺気が送られてきていた位置と重なる。
 塀を背に立つカイルたちの正面に、敵はいた。

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