《MUMEI》

「え…こんな…」

克哉さんが胸ポケットから取り出したケースを開くと、その真ん中には僕には似つかわしく無いくらい煌びやかな指輪が輝いていた。

克哉さんはそれをケースから取り出すと、僕の指にその指輪を填めてくれた。

「…わ///」

それはウソみたいにスッと指に納まっていた。

「サイズぴったりだし…どうして分かったんですか…僕、指輪とかしてないのに…」
「寝ている時に測ったよ、キミは一旦寝ると起きないからね」
「そう…ですか///」

そういえば、寝ている時…。

克哉さんが僕の身体をゴソゴソと触っている時があったのだけど、起きたくても眠くって身体が動かないんでいつも気持ち良く触られながら、そのまま眠ってしまっていた事が何度もあった。

きっとその時だろう…。

その時に指輪のサイズまで測っていたなんて…全然知らなかった。



「答えを、聞きたいな」
「え……ぅん……」


もちろん、克哉さんは申し分無いくらい立派な人で…。

性格も今まで会った事も無いくらい良い人。

でも…良い人ってのは…。

自分に嘘をついて演じてる人と、周りに嘘ついて演じてる人ってのがいるけど。

克哉さんは、演じてるなんて事は無いと思う。


弟さん達にもかなり好かれてるようで、まるで可愛らしい子犬のように懐いていて。

ウチの店長も”眉間に力のある良い人だ”って言ってくれてるし。

克哉さんって何だか分からないけど、余裕があるんだよな…。

大人なんだよね…。

僕とたった3つしか違わないのに…。

むしろこんな僕なんかに、こんな立派な人。

彼に僕はふさわしく無い。

「アキラ…」

なかなか答えない僕を、克哉さんが心配そうに見つめている…。

もちろんこんな事されて嬉しくないワケが無い。

でも…。

こんな僕に…受け取る資格なんか…。

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